アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.23 L.1】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.19 L.20 (補題1*lについて) X

関連項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.23 L.3 必要条件を証明する Y3 必要性を証明する(→詳細
P.23 L.7 十分条件を証明する Y3 十分性を証明する(→詳細



  • 補題1*lの原文の表現は,このようになっています:If R is reflexive and complete, then a necessary and sufficient condition for C(S,R) to be defined over a finite X is that R be acyclical over X.
  • Rが反射的かつ完備的であるという前提のもとで, (A)「C(S,R)が有限集合X上で定義されること」の必要十分条件が(B)「RがX上で非循環的であること」であるということを主張する補題です。
  • 「必要性を証明する」というのは,(A)であるためには(B)であることが必要であることの証明,すなわち,(A)→(B)の証明のことです。ただし,ここで待遇を取って,not(B)→not(A)の形で証明しています。(証明の第4行目半ばまで。)
    • この証明部分は判りやすいかと思います。
  • 「十分性を証明する」というのは,(A)であるためには(B)であれば十分であることの証明,すなわち,(B)→(A)の証明のことです。
    • まず「すべての選択肢が選好にかんして無差別」のとき,(すべての選択肢が最良要素なので)C(S,R)が空集合にならない,つまり有限集合X上で定義されることを確認しました。
    • つぎに「すべての選択肢が選好にかんして無差別ではない」ときを考えます。
      • 少なくとも1つの厳密に順序づけられた選択肢のペアがあるはずなので,その2つを x1
      • とx2と考え,x2Px1とします。
      • {x1, x2}のうちであれば,最良要素はx2です。
      • Sの中でx2が最良要素になれないとすれば,それは「x3Px2となるようなx3がSの中に存在する場合」です。
      • ところで,(この証明では推移性を前提していないのですが,それでも,)このときx1Px3は考えられません。 もしそうであるとすると, x1Px3x3Px2,および非循環性により,x1Rx2でなければならず,これが先ほどのx2Px1と矛盾するためです。
      • よって,x3Rx1です。
      • 以上より,「x3Px2となるようなx3がSの中に存在する場合」,{x1, x2, x3}のうちであれば,最良要素はx3です。 (x3Rx1x3Px2(つまりx3Rx2かつ~(x2Rx3))が得られているため,最良要素の定義(P.15の定義1*4)によりこのように判断されます。)
      • さて,Sの中でx3が最良要素になれないとすれば,それは「x4Px3となるようなx4がSの中に存在する場合」なのですが,その考え方は上記と同様であり,この場合は {x1, x2, x3, x4}のうちであれば,最良要素はx4が得られます。
      • こうして順に考察を進めていくと,Sの要素は有限なのですから,いずれSの中に越えるもののない,真の最良要素が得られるはずです。
      • 以上,「すべての選択肢が選好にかんして無差別ではない」ときにも最良要素が存在し,C(S,R)が定義されるということを確認できました。
    • いずれの場合にも最良要素が存在し,C(S,R)が定義されることが確認できたため,十分性の証明が終了します。





本ページの概要とお願い:
  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
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[2012年4月29日 初版をアップ]


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