アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【定理4*2について】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.67 L.14 (定理4*2について) X



  • 「定理4*1の証明で用いたのと同じ例」とは, xRy⇔〜〔(∀i: yRix)&(∃i:yPix)〕のことです。
  • 条件U, Iについては定理4*1で確認済みでした。 残りの条件P*と条件D*の成立を確認できれば十分です。
  • 条件P*の成立について:xRy⇔〜〔(∀i: yRix)&(∃i:yPix)〕の下で, (1)[∀i:xRiy&∃i:xPiy]→xPyと, (2)[∀i:xIiy]→xIyが両方とも成立するかどうかを確認します。

    (1)は,まず[∀i:xRiy&∃i:xPiy]のときは,〔(∀i: yRix)&(∃i:yPix)〕が成立しないので,反対の〜〔(∀i: yRix)&(∃i:yPix)〕は成立し,よってxRyが成立します。

    また,[∀i:xRiy&∃i:xPiy]のときは,反対の,〜[∀i:xRiy&∃i:xPiy] が成立しないので,よって定義より,〜(yRx)です。

    以上,xRy&〜(yRx)よりxPyが導けました。

    (2)は,[∀i:xIiy]のときは,〔(∀i: yRix)&(∃i:yPix)〕が成立しないので,反対の〜〔(∀i: yRix)&(∃i:yPix)〕は成立し,よってxRyが成立します

    また,[∀i:xIiy]のときは,〔(∀i: xRiy)&(∃i:xPiy)〕も成立しないので,反対の〜〔(∀i: xRiy)&(∃i:xPiy)〕は成立し,よってyRxが成立します。

    以上,xRy&yRxよりxIyが導けました。

    これで,条件P*の成立を確認できました。

  • 条件D*の成立について:xRy⇔〜〔(∀i: yRix)&(∃i:yPix)〕の下で, 常に(1)[xPiy]→xPyか(2)[xRiy]→xRyが成立するような個人がいないことを確認します。

    (1)は,xPiyの個人iとyPixの個人が同時に存在する場合に,社会的に常にxIyとなるため,常に[xPiy]→xPyとなるような個人iを実現することはできません。(このことはx, yのペアをどのように選んでも変わりません。)

    (2)は,xRiyが成立しているときに,xPiy(同時に〜(yRix)が成立)か xIiy(同時に(yRix)が成立)のいずれかであることに注意します。後者の場合には,xRyとyRxの帰結が必要ですから,結局xIyが実現しなくてはなりません。

    xPiyであるときに,結果的にxRyが実現するのはよいでしょう。 (xRy⇔〜〔(∀i: yRix)&(∃i:yPix)〕の下では,その能力は全ての個人に当てはまるのですが。)

    ですが,xIiyのときには,社会全体で(∀i: yRix)&(∃i:yPix)が成立すると〜xRyとなるため,誰か一人でもyPjx(j≠i)であるような個人jがいると,xIyが実現されません。つまり,常に[xIiy]→xIyとなるような個人iは存在し得ません。(このことはx, yのペアをどのように選んでも変わりません。)これより,常に(2)[xRiy]→xRyが成立するような個人がいないことが判ります。

    以上,条件D*の成立を確認できました。






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[2015年7月16日 初版をアップ](最終アップデート:2015年7月20日)

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