アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.26 L.25】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.26 L.25 (補題1*pについて) X



  • 証明の3行目まではよいでしょう。
  • 証明の4行目からは,PI→PPの背理法による証明です。
  • PPが満たされないとすると, 「xPyかつyPzかつ~(xPz)」となるx, y, zがあるはずです。
  • この~(xPz)について,以下を考えます。
    • 完備性が前提されているので(証明1行目),xRz or zRxは必ず成立するはずです。
    • よってxRz or zRx= (xRz & zRx) or (~(xRz) & zRx) or (xRz & ~(zRx)) ですが,右辺の3番目の(xRz & ~(zRx))はxPzの意味ですから,(~(xPz)と矛盾するので)実際は可能性がありません。
    • 残る部分をまとめ直すと (zRx & ~(xRz))または(zRx & xRz) です。
    • つまり,「zRx」は必ず成立する必要がありますが,「zPx」(zRx & ~(xRz) )のケースと,「zIx」(zRx & xRz)のケースがあるということです。
  • 以上より,「PPが満たされないとすると, xPyかつyPzかつzRxとなるx, y, zがあるはず」であり, また(A)「zPx」または (B)「zIx」のいずれかが成立するといえます。
  • 証明5行目のzPxはAのためです。このケースでは,x, y, zはいずれも自分より上のケースがあって選択集合に残れません(xはzPxが問題,yはxPyが問題,zはyPzが問題)。「選択関数を生成する」という前提に反するので,ありえないケースだったことになります。
  • 証明6行目のzIxはBのためです。(Aが無理だったのでBを試みます。)しかし,これが「yPxかつxPy」の矛盾を生じていきます。
  • 結局,A, Bのケースがどちらも成立せず,背理法による証明が終わることになります。





本ページの概要とお願い:
  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
  • 本ホームページの主旨や注意などについては,こちら(「読解のポイントを探る」項目リストページ)をご覧下さい。




[2011年9月21日 初版をアップ]


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