アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.20 L.1】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.20 L.1 (補題1*gについて) X



 ここでも具体例を考えてイメージを広げることを考えます。

〔議論1〕
  • 元となる集合Xを「1から6までの整数」の集合とします(X = {1, 2, 3, 4, 5, 6})。
  • また,部分集合Sを「1から4までの整数」の集合とします(S = {1, 2, 3, 4})。
  • ここで,以下の表のような関係Q,Tを考えると, Qは「∀x, y∈S⊂X: xQy⇔x=yな準順序」です。 また,Tは「Sの要素からなる順序」です。
  • Q(a\b) 1 2 3 4 5 6
    1        
    2      
    3      
    4      
    5        
    6          

    T(a\b) 1 2 3 4
    1
    2  
    3    
    4      
     

    • つまり,QはS = {1, 2, 3, 4}の選択肢については対角線の成分だけがある状態ですが,これはこれで全体として反射性と推移性を満たしています。完備性はもちろん満たしていません。
    • Tは反射性,推移性,完備性を満たしており,(Sにおいては)順序です。
  • ここで,上記のQ, Tは,いずれもつぎの順序Rと両立します。
  • R(a\b) 1 2 3 4 5 6
    1
    2  
    3    
    4      
    5        
    6          

  • なお,この補題1*gでは,QとTが異なる集合を基礎にしていることが少し気になります。本書の部分関係の定義(p.19, 定義1*5)では,全体集合を共有する2つの準順序Q1, Q2を前提にしていました。この補題1*g以降では,「Q1がQ2の部分関係である」というとき,"Q1の前提する選択肢集合がQ2の前提とする選択肢集合の部分集合になっているケースも許される"ように,定義が拡張されているものと理解して進む必用があるようです。
〔議論2〕
  • ところで,上記の議論では部分集合をS = {1, 2, 3, 4}としましたが, 要素1, 2, 3の部分にのみ注目して,S ={1, 2, 3}としても,補題1*gの条件を満たしますので,やはり同様の議論が可能です。
    Q(a\b) 1 2 3 4 5 6
    1        
    2      
    3      
    4      
    5        
    6          
  • もちろん,S として{1, 2, 4},{1, 3, 4}, {2, 3, 4}を取っても同様です。{1, 2, 3, 4}から2要素を選ぶこともできます。また,S={1, 5}とすることも可能です。
  • Sを任意の1要素からなる集合や空集合と位置づけることも可能と思われます。(順序Tの実態がシンプルになりますので注意が必用ですが。)これらの場合,補題1*gは補題1*fと同一と考えてよいように思われます。





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[2012年4月28日 初版をアップ] (最終アップデート:2013年5月31日)


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