アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.17 L.14】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.17 L.14 (補題1*dについて) X



  • 一般にC(S,R)⊂M(S,R)であるこがわかっているので(P.15,,L.10),M(S,R)⊂C(S,R)を示せばC(S,R)=M(S,R)を証明したことになります。そこで大筋として,M(S,R)⊂C(S,R),つまりz∈M(S,R)→z∈C(S,R)を証明しようとしています。
  • まずはじめに,C(S,R)は空でないので少なくとも1つ要素があります。それをx∈C(S,R)とおきました。
  • 証明2行目でz∈M(S,R)からz∈C(S,R)を導く路線に入ります。 証明2行目の右辺は,M(S,R)の定義から得られます。 ここで~(xPz)は~(xRz & ~zRx)と同値であることに注意します(Pの定義)。
  • 証明3行目のxRzはx∈C(S,R)から得られます(C(S,R)の定義)。
  • さてxRzなので,~(xRz & ~zRx)が成立するためには,zRxが必要です。 (~zRxだとすると,xRzと~zRxが両方とも成立するので,~(xRz & ~zRx)が成立しなくなってしまいます。)よってzRxが得られます。
  • 証明4行目はxRzとzRxがあるためで,以上から「xIz」が得られました(Iの定義)。
  • P.18の2行目は,つぎのように考えられます。
    • まず x∈C(S,R)なので,「任意のyについてy∈S→xRy」(C(S,R)の定義)。
    • よって「xIz」かつ「任意のyについてy∈S→xRy」が得られましたが,ここで前者の「xIz」はyに依存しないので, 「任意のyについてy∈S→(xIz)」ももちろん成立します。
    • よって,「任意のyについてy∈S→(xIzかつxRy)」も成立します。この下線部の変形を試みます。
    • (Rは準順序なので)1*aの各項目が使うことができ,xIzかつxRyに対して,例えば, xIz & xRy = (xIz) & (xPy or xIy) = (xIz & xPy) or (xIz & xIy) = (zIx & xPy) or (zIx & xIy) = (zPy) or (zIy) = zRyのように計算します(強調部分で1*aの(3),(1)を使用)。
    • これで「任意のyについてy∈S→zRy」が得られます。
    • (ところで,xIzかつxRyからzRyを得るには,xIz & xRy = (xRz & zRx) & xRyとして,zRx & xRyから得るようにすれば簡単ですが,この場合は直接には1*aを使いません。この件については,後ほどもう少し補足したいと思います。)
  • P.18の2行目から3行目が得られるのは,C(S,R)の定義です。(以上,z∈M(S,R)→z∈C(S,R)が確認されたので,証明が収束することになります。)





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  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
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[2010年12月18日 初版をアップ](最終アップデート:2012年6月10日)


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