アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.4 L.1他】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.4 L.1 これら Y3 この双方
P.4 L.2 多様な Y3 異なった
P.4 L.3(L.4) 多様性 Y3 異なり



  • 現在の訳の「これら」「多様な」「多様性」は, 原文ではそれぞれ"both", "differ", "diversity"に対応しています。 通常であれば「この双方」「異なった」「異なり」とも訳せる表現です。
  • 段落全体としては,(単に2つでなく) 多様な可能性があることを説明しており, その意味では現在の訳の方が都合がよい面もあると思います。
  • ですが,まず"both", "differ"に関しては,ここでは先行する2つの例(「冷静な経済専門員」と「怒れる群衆」)を念頭に,これら(ある意味,両極ともいえる)へのアプローチが異なったものにならざるをえないことを説明しています。そこで,「2つ」という印象が残るように訳すことも大切でしょう。
  • この観点から,"both", "differ"は「この双方」「異なった」の訳の方がよいかと考えました。
  • "diversity"の議論では,必ずしも2つでなく, 3つ以上の意味も加わっていると思われます。 ですが,次の段落で「多様性は並外れて大きい」と「多様性」の訳語が使われており(こちらは"varieties"),本段落で"diversity"を「多様性」と訳すと,原文で両者が違う単語で表現されていたことが判らなくなります。 また,この"diversity"は直前の2つの事例を受けた議論ですので,文脈上,次の段落の「多様性」の議論ほどには多くのバリエーションが想定されていないように思われます。
  • この観点から,"diversity"は,3つ以上の場合も含めた意味で「異なり」と訳してはどうかと考えました。 (「相違性」「差異性」などでもよいかと思いましたが,可能な訳のひとつとして「異なり」を考えました。)





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[2011年8月22日 初版をアップ](最終アップデート:2011年8月29日)


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